日本のルアー釣りで何が好きかと聞かれたら、迷わずに答えることができるー渓流釣りだ。
ベトナムに移り住む直前に住んでいたのが山に囲まれた長野県だったこともあり、
日本での最後の10年ほどは、ほとんど渓流釣りばかりしていた。
国土のほとんどが開発された日本にあって、
山の奥深くにはかろうじて人間の手が加えられていない自然が残る。
木々の緑と山の頂と川のせせらぎだけで構成された自然の中、
アマゴやイワナといった、小さいけど宝石のように美しい魚たちと遊ぶ。
山の国・日本の美しさを凝縮したような釣りなのである。
時には川幅30センチしかないような沢を舞台にするこの
釣りは、
日本で育まれた独自の釣りである。
5フィートに満たない柔らかい竿に、
精密機械のような小さなリールに2lbライン。
4~5センチのかわいいミノー型ルアーは、
餌となる小魚を忠実に模倣し、
自然そのものを映している。
またロッドグリップやランディングネット、タックルボックスなどに、
美しい木目の木材を使用するなど、
自然との調和にこだわる釣り人が多いのも特徴だ。
レイチューンやホットショット、ウッドベイトと言った、
バルサなどウッド製ハンドメイドの一級品となると、
これはもう芸術と言っていいほどの領域に達している。